例え自分が死んでもお前だけは… その考えが通用しない世界。理不尽ってこういう事?
「君たちには期待してるよ」
最後から数えて3番目に出発する俺らにプロデューサーは笑顔で言った。まるで新しい玩具を与えられたガキのような笑顔で。 “期待してる”?何に?人を殺すこと?そこに「寝てる」ビッキーズみたいに他の奴も殺せって?俺らが?こんな意味ないゲームに参加して数字のために仲間殺して……
「何に期待してんねん?
」 「君らはこのゲームに適している」
「あ?」
「二人の運動神経や精神力的なモノは上の人間も多少評価してるんだよ」
「人を何やと思ってんねん」
「間違ってるか?井本…お前が一番、ビッキーズの二人の“死”に動じていないように見えたけど」
藤原が何か言った気がした。でも気付いたら奴の胸ぐらを掴んでいた。
「本当のこと言われて怒ってんの?」
歯止めがきかなくなる―。 プロデューサーの顔目がけて力一杯、腕を振り下ろそうとしたとき体が宙に浮いた。
「っ!?」 全身が冷たい床の上に打ち付けられ、見上げると藤原が冷たい目で俺を見下していた。
「あははっ!藤原も相方のせいで死にたくないよな!」
奴の言葉が突き刺さる。…嘘やろ?藤原―。
「はよ行きたいんで荷物くれませんか?」
藤原の低い声が静まり返った教室に響く。 嘘やって…何で、何でお前が… 無言で兵士が藤原にナップザックを渡す。荷物を受け取った藤原は、未だ動けない俺を無理矢理引っ張り教室から出ようとした。するとプロデューサーが俺に近付き微笑みながら言った。 「精々、相方の足引っ張らないようにね」 言い返す暇も与えない力で藤原が腕を引っ張って行く。ただ放心状態で、引っ張られている状況もこの現状自体もわけが分からなくて頭が混乱して吐き気がした。 教室を出て数分も経たないうちに森へと景色が変わる。いまさら言い返せなかった悔しさで腹が立ち乱暴に藤原の腕を払う。藤原が振り返り俺と目を合わせた瞬間、俺は目の前の相方を思い切り殴り飛ばした。あまりにもあっけなく殴れた事になおさら腹が立つ。
「何、簡単に殴られてんねん!殴り返せやっ!」
「アホか」
「アホはお前やろ!何であんとき止めた?!」
「………」
殴られた頬を手で押さえ藤原は答えようとしない 「答えろや!」
「…死んでほしくないからに決まってるやろ!」
やっと答えた藤原はどうして気付かなかったのか小さく震えていた。 「ビッキーズの二人の最後…見てたやろ?俺は絶対にお前に死んでほしくない」
こいつは…こいつは何処までアホなん?
「俺、死にそうになったらお前盾にして逃げるかも知れんねんぞ」
「何時でも盾になる準備できてるわ…俺死んだらお前も死ぬしな。おあいこやから許す」
「…………」
笑いながら何言うとんねん…俺の心配ばっかして。キショいわ。本当アホ。俺が格好悪いやんけ。 気を紛らわすために放り出されたナップザックを探る。爪にカチッと鉄のような何かがあたった。取り出すと映画やゲームで何度も見た拳銃が出てくる。掌に収まる、決して見た目強そうとはいえない小銃。
「お前にピッタシやな」
「うっさいわ、ボケ」
藤原に何時ぶりか思い出せないツッコミをして空を見上げる。やっぱり腹の立つ快晴が心を擽り何故か笑っていた。
「なぁ藤原」
「ん?」
「あのクソプロデューサー、俺らがこのゲームに適してる言うたな」
「おん、それが何?」
「あいつに後悔させんねん……生き残って俺らであいつ殺すぞ」
「あぁ、当たり前や……井本」
「何?」
「生きろよ」
「………………当たり前や」
パンッ―。 空に向かって一発だけ銃声を響かせる。 かならず生き残ってみせる。 例え、どんな手を使っても…。

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