最初に視界に映し出されたのは真っ白な天井。 続いて戻ってきた聴覚には賑やかで明るい人々の声。 少しずつ覚醒していく意識の中少々違和感を感じたのは、周りの者が生きていたこと。 ――なんだ…殺さなかったんだ…。 ゆっくりと体を起こし、ぼやけた目をこすると、すぐに誰かが気づき声をかけた。  「あ、おはようございます」  「うん、おはよー」 レム色唐沢拓磨の明るい挨拶に返事をしつつ、次長課長井上聡はゆっくりと首を動かし相方の姿を探す。 清潔で広いリビングの中、こちらに背を向けアップダウン竹森巧と談笑している河本準一を発見した。  「なんや、起きたんかー」  「うん、起きた。なぁカワモト君」  「コウモト!」 こちらを振り返った河本を、いつものボケを交えつつ手招きした。 キッチンテーブルを囲み座る河本はツッコミながら立ち上がり、井上が眠っていたソファーへと寄ってくる。 身を屈めた河本に井上は耳打ちした。  「なぁ、殺さなかったん?」「あぁ、まぁ機会も無かったし」「そっかー」
2人は、マギー審司を麻酔銃で撃ったところ、彼に襲われていた(ようだったが、井上はマギーがやる気になるとは思えなかった) アップダウンを救ったことになった。そこにレム色・赤いプルトニウムとも偶然出会い、 5組はレム色の『プログラム脱出作戦』に乗り、その作戦を立てるため、民家へ移動し今に至る。 その民家に着いたとき井上はソファーに寝そべるなり河本に言った。  「やるんやったらやっといてええよー」  「なんやそれ、他力本願やん」  「だってやる気になったのおまえやん。俺付き添いやでー?」 まだ河本が何か言っているのが聞えたのだが、それを無視し井上は再び体を横にした。

「んで、結局今何してるん?」  「阿部が二階のベランダで見張りしとって、他の皆はレム色の唐沢君が作戦立てるの待ってるん」  「あれは?あのーほら俺らが麻酔銃で撃ったマギーさん」  「まだ寝てる。赤プルが一応ついてるみたいや」 井上の質問攻めに河本はため息をついた。  「なんやもう、おまえ一人寝て楽やなー。俺らずーっと起きてて眠いわぁ」  「寝ればええやん」  「じゃあそこどけ。俺も寝るわ」 渋々井上が立ち上がりソファーを河本に譲りかけた時だった。  「すいません、河本さん、 今からここにあった食材で昼ごはんつくろうと思うんですが手伝ってくれませんか?」 キッチンに立つレム色の渡辺剛太の声が河本を止めた。 渡辺の隣では竹森が頷いている。  「なんで俺やねん!さっきからねとったコイツでええやん!」  「やっぱり独身男より一児の父のが家事できるでしょ」 竹森が可笑しそうに言った。  「ほら、手伝いに行けよー」 ポンと背中を叩くと河本は仕方がなさそうにキッチンへと向かった。  「もうおまえのぶんの飯は作らんからなー!」  「えー?!なんでよー?」 2人のやりとりが面白いのか周りの皆から笑いが起こった。

明るい笑顔と笑い声が溢れる平和なこの民家が時期に地獄と化すとは、 このときこの場にいる殆どの者に知る由もなかった。

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