「なぁなぁ、どんな計画立てとるん?」 テーブルに腰をかけ『プログラム破壊大作戦』と書かれた紙を見つめる唐沢の隣に 井上聡は腰を下ろした。相方の河本も同じ事務所のアップダウンも何か作業をしていて さらに一緒に飲んだこともあるマギー審司は眠りについている。 話す相手もいなく、ボーッとしているのにも飽きたところだった。  「えっと、本部である分校の周りって、木で囲まれてるじゃないですか。 だから周りに火を放って、本部ごと焼きつくそうって作戦です。本部もちょうど木造建築ですし」  「へぇー、よく気づいたなぁ、そんなとこ」  「でも簡単に燃え移るわけないから、ガソリン使ったりと色々工夫しなきゃならないんですけどね」 今までレム色との接触なんて、無いも同然だったが、 こうして初めて話してみて、たぶんこいつは自分より全然賢いんだろうことはすぐにわかった。 バラエティー番組に出ても『馬鹿』としか言われない自分とは正反対だなー。 井上は素直に関心した。  「あ、なんか匂いしません?」 どうやら昼食が出来たようだ。仕切られた壁の向こうから盆を持った河本が姿を現す。 盆の上にはラーメンが三つ、乗っていた。  「えっと、これが唐沢君のぶんやな」  「ありがとうございます」 唐沢の前に丼と箸が置かれる。そこから上りたつ湯気と匂いに、 この民家にインスタントラーメンが置いてあって良かったな、と思った。  「なぁ、俺にもー」  「おまえに食わせるラーメンはねぇ!!」 それで唐沢が笑い、井上もつられて笑った時だった。 丼が地面に落ち砕ける音、それに続いて悲鳴が聞えてきたのは。

弾けるように唐沢が立ち上がり、声のしたほうへと向かう。一足遅れ、井上と河本もそのあとを追った。 その声の発生源である、マギー審司と赤いプルトニウムがいた部屋の前には、キッチンで作業をしていた竹森巧(アップダウン)と渡辺剛太(レム色)が既に駆けつけていた。  「なんやなんや?」 河本が、尋ねながら部屋の中を覗きこむ。唐沢も同じように、状況を把握しようと中を見た。と、同時に2人の息を呑む声が聞え、井上も一番遅れて部屋の様子を伺う。  「な、なんで…」 小さく呟き、恐怖で震える赤いプルトニウムが地面に座りこんでいた。その赤プルの視線の先を追っていくと―― 血だ。白いシーツが敷かれたベッドには、血液が大量に付着している。そしてその血液の主は――  「マギーさん…」 思わず口から漏れた自分の声で井上は再確認した。間違いなく、口から血を流しグッタリとベッドに身を預けているのはマギー審司だ。  「これって、どういうことなんですか?」 渡辺が震える声で聞いた。その問を求めるように、全員の視線が一斉に赤プルに向けられる。 その視線に気づいた赤プルは、首を横に大きく振った。  「違う!あ、あたしが殺したんじゃない!マギーさんが起きて、だから渡辺君から受け取ったラーメンを渡して、マギーさんが食べて、そしたら…!!」  「ってことは――…毒?」 沈黙が訪れる。井上は考えた。 一瞬、河本がやったのかと思った。しかし河本は毒物なんか持っていなかったはずだ。 持っていたのは手榴弾と、防弾チョッキ。仮に河本だとしたら、どうやって殺したんだ? 毒の代わりになるようなもの。口にすると死んでしまうもの…。そうだ、以前聞いたことあるぞ。 なんだっけ、ほら…何かをコップ一杯飲むと死ぬって…えーっと、えーっと…

 「…醤油?」

自然と出てきた自分の言葉にハッとする。 全員の視線が井上に注がれた瞬間、赤プルが動いたのを井上は見逃さなかった。 部屋の机に置かれていた銃を素早く構えると、赤いプルトニウムは静かに言った。  「誰が、やった?」
――マギー審司死亡

【残り35組】

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