友近は阿部の前をゆっくりと歩きながら考えていた。 あの建物からは既に大分離れている。田中も山根も腰が抜けていたようだが、あの二人もガキではない。いくら何でももう逃げただろう。 あとは、いつこの後ろを歩く小鬼を殺すか、ということだけだ。 何処までも続いていそうな細い道を歩く。木が多い茂って真っ暗なので、昼なのか夜なのかも分からない。 今、何時かなぁ…などとどうでも良い事を考えながらナップサックに入れたマシンガンを生地の上から触った。 「…まだ?」 といぶかしげに阿部が尋ねる。 友近はその言葉を合図にするように、ピタリと歩みを止めた。阿部の目が少しだけ見開かれる。振り返り、彼女は言った。 「あたしは知りませんよ。あなたの相方が何処おるかなんて。」 友近は、さっとマシンガンを取り出し、阿部に向けて構えた。 「あの人らを逃がすための嘘やねんから。」 さすがの彼も表情を強ばらせる。じりじりと後退したかと思うと、いきなり背を向けて走り出した。 逃がさない! 引き金を引くと、勢いよく弾が飛び出す。思った以上の身体への負担と銃の重さから、上手く扱うことが出来ない。 弾は近くの木を掠めたり、何もない空に向かって飛んでいったりした。

「…痛ったあ〜…!」 撃った後の代償として、手に痺れが走る。感覚がなくなり、銃を取り落としそうになるも、何とか腕全体を使って受け止めた。 ふと、周りが静寂に包まれた。友近は辺りを見渡した。 逃げられたのだろうか。そう考えていると…。

――ズドンッ!

「きゃっ!!」 脹ら脛を掠めた弾丸が、地面に突き刺さる。ばしっ、と土が抉られるように跳ねた。 この威力はきっと、ライフル銃。 木の陰に隠れた阿部がどこからか狙ってきているのだ。周りは同じような大きな木が生え、視界も悪い。 阿部が何処にいるのかすら分からなかった。 とにかく、此処に突っ立って居れば確実に殺される。 友近は慎重に後ずさりし、その場を駆け抜けるように走り出した。途中で木の枝にぶつかりマシンガンを落とした。 一瞬立ち止まり取りに戻ろうとするも、阿部の追いかけてくる足音が聞こえ、踵を返して再び走り出した。 友近の落としたマシンガンを拾い上げ、阿部は少し笑った。 そして、友近の逃げた方向を向いて歩いていった。 「もう、…何で追いかけてくんの!?嫌や…誰か助けて!」

「あ…」 「山根どうしたの?」 「友近さんの声…」 「え?嘘…聞こえたか?なあお前」 「にゃーお」 「いや…聞こえたような気がしただけ」 「ふうん…そう言えばこいつさっきから元気ないんだよ。苦しそうって言うか…」 「おい猫、大丈夫?でも実は山根さんも体調悪いんだよね、さっきから」 「何だよお〜い!しっかりしろよぉ?」 「にゃあ」

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