話は、大滝が襲撃される前に戻る。 キャン×キャン、長浜も玉城も、最初はそんな気なんて無かった。 確かに、ビッキーズの壮絶な死に様を見せ付けられた。それに、中には個人的に私怨や、妬み等を持つ芸人同士もいるだろう。だとしたら、それを晴らす絶好のチャンスだ。 だけどそれ以前に、皆分別のある大人だ。いきなり武器を渡されて、さあ殺し合いをしなさいと言われたって...。さっき迄一緒に楽屋でくつろいでいた者達が殺し合いだなんて...。 当初二人はそう話していた。 だけど、二人の思いを裏切るかの様な、死者の名を告げる放送。銃声や叫び声。血の臭いと、屍。 そして、たまたま死角におり、そこで息を潜め身を隠していたから助かった様なものの...芸人と芸人が殺しあうのを見てしまった。 二人は次第に、喋らなくなっていった。 所々休みながらとは言え、もうどれ位歩いただろう。二人は海辺に辿り着いた。 幸い周囲には誰もいない様だった。二人は砂浜に腰を下ろし、海を見つめた。 もう夜明けも近い。周囲も明るくなってきた。明るくなってきたからこそ、何時迄もこんな見晴らしのいい所にいるのは危険だろう。 「死ぬ前に一度、沖縄に帰りたかったな。」 玉城が、そう言った。 「殺らなきゃ、殺られる。」 沖縄に帰りたい、その思いは長浜も一緒だったが、返事の代わりに、そう言った。 玉城はこくん、と頷くだけだった。長浜がそう言ってなかったら、自分がそう言っていただろうから。 二人がそう思う前に、仲間になってくれる者、一緒にゲームを潰そうと言ってくれる者がいたら、そうならなかったかもしれない。 二人は立ち上がると、パンツについた砂を払い、海に背を向けて歩き始めた。 ゆっくりと、波の音が遠ざかって行くのを感じながら。 それからまた、どれ位歩いて、どれ位休んだだろう。途中で一度だけ、修羅場はあったが、何とか潜り抜けられた。 森の中、もう波の音は聞こえない。 そこで二人は信じられない者を見た。 「あれは、18KINの...」 長浜が小声で言った。 ゲーム直前、エンタの楽屋に18KINの姿は無かった。なのに、今、大滝がここにいる。何故か合い方の今泉の姿は無いが。 人数が増えている!? 二人の恐怖心は、更に強固なものになった。 「とにかく、殺らなきゃ、殺られる。」 玉城が小声で言った。 二人は大滝に気付かれない様に後をつけながら、作戦を立てた。 さっきの様なへまをしない為にも。

さっきの様なへま...そう、大滝を襲撃する前に、二人はどーよを襲撃していた。 たまたま、どーよの二人が歩いているのを見かけた。幸いな事に、自分達の方には背を向けて。 長浜も玉城も、ボーガンを使うのは初めてだ。でも至近距離で弓を引けば、多分当たるだろう。そう、思った。 二人に気付かれない様にそっと近寄り、長浜はテルの背中に狙いを定めた。 これだけ距離が近ければ...だけど、ボーガンの弦は、想像以上に硬かった。矢は狙い通りには行かず、テルの足を掠めた。 「うっ...」 テルは傷を押さえ、しゃがみ込んだ。 ケンキは異変に気付き、振り返って、長浜に拳銃を向け、引き金を引いた。 が、長浜もボーガンを使うのが初めてなら、ケンキも拳銃を使うのは初めて。長浜に掠りさえ、しなかった。 キャン×キャンの二人は全力で逃げた。テルの傷がどの程度のものかはわからない。ただ、深手を負ったのか、どーよに追われる事は無かった。 それ故、キャン×キャンの二人は無傷で逃げる事が出来た。

玉城は大滝に気付かれない様に、先回りした。 そして長浜は大滝にボーガンの矢を向けた。 玉城も長浜も、ずっとジャイにつけられていた事に気付かずに。

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