非現実的な現実。 子供のころ頭の中で描いていた様々な世界。夢。 大人になるにつれて廃れていった夢を、また見ているのか? そう考えることは自然だった。 しかし現実は残酷で、頬を抓ってみれば痛みはするし、 教室で見たビッキーズの悲惨な死。あれは紛れもなく本物だ。 夢でも無い。悪い冗談でもない。この現実から逃れることが出来ないのは、 自分の首に巻きつく艶やかに光る首輪が物語っている。  井上マーは小高い丘のてっぺん、木の根元に腰をかけながら夜空を見上げていた。 井上はもうすでに現実を受け止めている。 ようするにこれは、自分の尾崎ネタでもある“生きる自由”の強奪。 なにが“支配からの卒業生”だ。 エンタでの自分のキャッチフレーズを思い出し、井上は苦笑いを隠せなかった。 ――思えばこの支配の象徴、首輪をつけられ殺人ゲームに参加させられる前から、 沢山の芸人がエンタに支配されていたかもしれない。 漫才芸人があまり漫才をやらせてもらえなかったり、多忙である芸人に次々と出演を押し付けたり。 自分は別に構わないが、一部の芸人はそのことについて愚痴を漏らしていたりした。 番組的支配の中でやった尾崎ネタ。なんだか馬鹿らしいものだ。 どうせ自分が死んだって、お笑い界に打撃も無いだろう。どうせなら自分の代わりに もっと有力な人材に生き残ってもらうべきだ。エンタだってそれを望んでるはず。 そんな自分がやることは一つしかない。――エンタの、そしてこのゲームからの支配の卒業。 それが新の自由じゃないか?  井上は立ち上がった。もうすることは決まっている。 ナップザックの中に入っていた支給武器――ロープ。 これで支配から逃れてやろう。一足早く、あっちの世界に逝くのも悪くないじゃないか。
こうして“支配からの卒業生”井上マーは、新の自由を手にした。

――井上マー死亡

【残り65組】

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