暗闇に堕ちていく。堕ちていく感覚はない。ただスローモーションのようにゆっくりと、自分の体が重力に逆らう事無く暗闇へと消えていくのが分かる。何も見えない。 恐怖がないと言えば嘘になる。でも何処か安心している。何故?光の欠片も見えないこの場所で、何故自分は安心している?答えが検討もつかない。でも一つ思った。 あぁ…あの時に似てんな。関東に進出したばっかのとき、仕事も何もなくてただ“生きてた”あの時に―。 「今日は皆さんにちょっと殺し合いをしてもらいます」 こんな事になった原因はなんやった? プロデューサーの一瞬、可笑しいと思わざるをえない言葉。突然突き付けられた現実は得体の知れない“ゲーム”だった。 ライセンスの井本 貴史は決して良いとは言えない寝起きの頭を整理しながらほんの数時間前に記憶を遡らせた。 確か久しぶりのエンタの収録でSPだからと1つの楽屋にたくさんの芸人と共に押し込められた。…そこから記憶が途切れて起きたらこれだ。 見たことのない、なのに懐かしさの溢れる教室のような部屋。記憶では数分だが実際には何時間か前に顔を合わせた芸人達。寝呆けたままの相方、藤原。首には違和感たっぷりの首輪。教室の壁を取り囲む撃つ気満々の兵士ども。 そして…ここに俺らを呼び出した番組のプロデューサー。 奴の言った一言に相変わらず俺の何かが拒否反応を示す。この状況…。悪いことが起きることだけは全ての芸人に判断できないはずがなかった。 「……どないなっとんねん」 あまりにも張り詰めた空気に横にいた井本でさえも聞き取れるか分からないぐらい小さな声で藤原が呟いた。その声は何処か震え、不安以外なにものでもなかった。 そんな図体はデカいくせに小心者な相方を励ます言葉を井本は掛けてやることが出来なかった。普段なら「こんなんでビビってんなや、アホッ!」と一括してやるのだが井本自身、正直言えば不安だった。それをせめて藤原に見せないようにするだけで精一杯だった。 今から一体、何が始まる?この見たことのある、あってはいけない“ゲーム”がゆっくりと、スタートへの駒を進めていた。 ―役者ト舞台ハ揃ッタヨ。サァ、幕ハ切ッテ落トサレタ。“ゲーム”ニ勝ツノハダァレ・ダ?

本編  進む

黒 ◆rGjeURACBw
SEO [PR] おまとめローン 冷え性対策 坂本龍馬 動画掲示板 レンタルサーバー SEO