「何で・・」 静まり返った窮屈な教室。 どうしようもない怒りに包まれた、喚き声にも似た呟きを上げた。 「何で俺らが…こんなことせなあかんねん!」 呟きが、叫び声に変わる。 叫んだ張本人・ビッキーズ木部が立ち上がる。 突然声を上げた木部に、一同の視線が向いた。 「お前らのためにな、何で殺し合いなんかせなあかんのじゃ」 木部は右手をぎゅっと握ると、近くにあった壁を思い切り殴った。 「木部ちゃん・・」 相方の須知がオロオロしている。 木部は気にせず、威風堂々としているプロデューサーを睨みつける。 「…普段の、木部らしくないじゃないか」 プロデューサーは鼻で笑った後、一歩前へ歩み出た。 「何のために、か。」 木部が言った事を復唱して、プロデューサーは歪んだ笑みを顔に貼り付けて、言った。 「数字と金のために決まっているではないか!」 両手を高らかに掲げ、プロデューサーは言う。 プロデューサーの口から出た、非人徳的な言葉。 当たり前だろう?とプロデューサーは付け足したが、 そんな言葉で木部が納得できるはずなど無かった。 「俺にはな、嫁も子供もおんねん!お前らなんかのために殺し合いなんかしたないわ!」 木部は叫ぶと、もう一度壁を殴りつけた後走り出した。
自分のために
相方のために
他の、こんな下らない物に巻き込まれる奴のために
俺は、戦うんや
殴りかかった木部の拳を、プロデューサーは軽々と受け止めた。 「嫁と子供のために、戦え」 「無理や。そんなんできひんわ。」 「じゃあ、選択肢はひとつや。」 意地の悪い笑みを浮かべて、プロデューサーは 右隣に居る兵士に合図した。 兵士がライフルを構えた、刹那。 木部の額に、黒く穴が空いた 「あ・・・・・」 木部は小さくうめいたあと、その場に倒れこんだ。 辺りを紅に染めて、木部はその命を絶たれた。 「木部ちゃん!!!」 相方の須知が、真っ赤な木部に駆け寄る。 「木部ちゃん、木部ちゃん!」 名を呼んで揺すっても、木部は目を閉じたまま動かない。 木部は、殆ど即死だったのだろう。 「木部ちゃん!」 須知が叫び、静寂が戻る。 やっと静まったと思った教室に、規則的で無機質な機械音が響く。 「!」 そして須知は、気付く。 その音が、自分の首輪から発せられていることに。 「あー、ごめん」 プロデューサーはわざとらしく、周囲に聞えるよう大声で言った。 「コンビごとに戦ってもらうから。片方が死ねば自動的に相方も死ぬから」 一気に須知の顔色が変わる。 青褪めて行く須知の表情に比例するかのように、機械音の速度が早まって行く。 「あ・・」 「須知、相方の心配する前に、自分の心配しろよ。あ、勿論みんなもね」 薄っぺらい笑いを、プロデューサーは芸人たちに振り撒いた。 教室の中を須知は彷徨う。 しかしそれは、無情にもやって来た。

パン

呆気ない音と共に、須知の首輪が、爆ぜた。 首元から吹き出した血が木部の亡骸に降り注いで――――― 須知は木部の上に、倒れこんだ。

本編  進む

功  ◆V9Blnd6aVs
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