浜辺にうつ伏せに倒れている二つの体。一見死んでいるように見えるが息があるのは確かだ。  「いやー麻酔銃ってホンマに寝るんやなー」 寄せては返す波の音の中、男前ランキング第三位を誇る涼やかな笑顔を浮かべ、 次長課長井上聡がどこからか現れた。その井上の足跡の隣に並ぶのは相方の河本準一。  「さてどうする?海に沈める?」 普通の人間が聞いたらおかしいと思う発言。 しかしこれは殺人ゲーム“プログラム”。ある意味当然なことだった。井上も、さも当然というように頷く。 それを合図に河本が二人のうちの一人――ちむりんのなみえの体を引きずりだした。 海に向かうそれは、砂浜に大きく弧を描く。 河本が殺しを行うことに対して興味は湧かなかったため、井上は自分の持つ銃をくるくると指で回した。自分の武器はこの麻酔銃。 そして河本は防弾チョッキ。どちらも攻防でいえば明らかに防御。しかし上手く使えばこのように他の芸人を消していくことは可能だ。 今回は向こうがこっちに全く気がついていなかったのがラッキーだったな――。  「おし、行こう」 銃に向けていた視線を上げると河本が作業を終えたのか、 ちむりんの二人の分の荷物も持ち井上の前に立っていた。  「なんかおまえ、やっぱり女性に対しても手加減ないなー」 相方の行動に苦笑いをする井上。それに河本は同じく笑みを返す。  「あれやな、ラジオでも言ってたやん。酒ぶっかけてきた女に蹴りかましたとか」  「あぁ、あれはなぁ…。でもかみさんの尻には敷かれてるし」 砂浜から遠ざかる二人の背後で則末チエの首輪が爆破する音が聞えたが、二人は振り返りもしなかった。  「そういえばあれやなー。あのラジオももう終わりやん」  「あのって、ハイブリットアワー?」 ヨシモトハイブリットアワー。週5日、吉本の若手がパーソナリティーを勤めるラジオ番組。 次長課長の二人は火曜日担当だった。  「うん。だって月曜と水曜、週2日も空いてしまうやん」  「火曜は空かないだ?」  「当たり前や。なんで俺らが死ななきゃあかんねん」 五味一男の目は間違いでは無かったのかもしれない。 二つ並んだ足跡を、月が艶やかに照らしていた。

――ちむりん死亡。

【残り60組】



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