「…やだ……こんなの嫌だぁぁぁ!!」 狂った様に叫ぶ児嶋の手は 血で、汚れていた。 「何を…してるんだ?」 長井は渡部に銃を突き付けたまま問い掛けた。 渡部が青木にナイフを突き付けている姿を見つけたのは、ほんの数分前の事だった。 何故、あいつらが… 青木に手を掛けてる? あいつらが青木を…苦しめてるのか? 何かを考える事もなく、長井は飛び出していた。 普段の長井ならもっと冷静に判断したのだろうが。 「…長井さっ……」 青木の声が遠くに聞こえる、 思考回路は誤作動。 「長井さんっ…!!」 渡部が何か言おうと口を開く。 思考回路、完全停止。 長井は引き金を――
「……っかは!!」 なんだ… これ。 長井は口から血を流し倒れた。 痛い… 血が…… 「長井さん!!!」 青木は重い身体を奮い立たせ長井に駆け寄った。 二人とも、死期は近いようだ。 「ごめん…な、青木。本当は…苦しませたくなかった…のにっ…」「…っ喋らないで……」
青木は涙と血を流しながら長井を抱き締めた。 「ありがとう…ございますっ……」 次第に呼吸ができなくなった長井はゆっくり目を閉じた。 「…………っ…」 最後に青木に声をかけたかったのに もう… 何も見えない。 「……また……いつか…」 もう、何も…聞こえない… 「    」 青木の声は 長井にはとどかなかった。

「…渡部…っ渡部…!!」 児嶋は渡部を抱え、その場から逃げて居た。 まだ 手には長井を刺した感覚が残っている。 「うぅ…えっ……」 ぽろぽろ涙を流す児嶋はまるで子供の様だった。 「…おぃっ…児嶋…。」 いつの間にか意識を取り戻していた渡部が児嶋の髪を掴んだ。 「痛っ……渡部!」 「…大声だすなっ……傷に響く」 児嶋は渡部を木の根元に降ろした。 「大丈夫?大丈夫渡部…?」 「……なんとか…。」 ふぅ…と息をつく渡部を安心した顔で見つめて居た児嶋だったが、ふと我に返った様に震え出した。 「…渡部……俺っ…俺!!」 「…………」 「俺、殺したんだ…。……長井さんを…この手で!!」 児嶋は渡部にしがみついた。 渡部の傷からは大量の血が流れ出していた。 「嫌だ……嫌だ……」 児嶋の赤く染まった手を渡部はしっかり握った。 「……ごめんな…児嶋。辛い思い…させて。」 そして握った手をそっと自分の傷にあてた。 「お前が一人で苦しむ必要無いからな…。」 柔らかく笑った渡部を児嶋は再び抱き締めた。 「…ありがとう…っ」 二人に束の間の休息を。 再び 歩きだせるように。

長井秀和─死亡
青木さやか─死亡

【残り53組】

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