まだ薄暗い朝、月が薄っすらと空に残っている。 そしてそんな空色を映す海も、少しずつ変化していきていた。 このプログラムが始まってから、もう一夜が明けてしまった。 あとどのくらいの時を、こうして過ごさなければならないんだろう? いっそ、時間が止まってしまえばいいのに。 涙でくしゃくしゃになった顔を海に向け、赤いプルトニウムはため息を吐いた。 切り立った崖を叩く波は、いずれも跳ね返り海に帰ってゆく。 海岸線沿いに歩いて断崖絶壁のこの場所まで辿りついた。 それからしばらく一人でじっとしていたが、その間誰とも遭遇しなかったのは幸運と言うべきか。
 「どうしたら…」
どうしたらいいか。その質問に答えてくれる者など誰一人いなかった。 このゲームに乗るということも一瞬頭を掠めたが、バタフライナイフなんて物では、 これだけ銃声が鳴り響いている中で勝ち抜くのは、とてもではないが無理だろう。 逆に誰かと組むという方法もある。Goro’s Ber の準レギュラーである自分は、 番組の共演者である友近や青木さやか、次長課長らとはそこそこの仲だ。 けれど青木さやかは先程の放送で名前を呼ばれてしまったし、 それにそう易々と信用していいものかもわからない。 もしも裏切られたら、もしやる気だったら――。 どうしてもそれが頭を過ぎり、立ち上がろうとしても足が動かなくなる。 結局、何も決断できないままだった。
 「どうしよう…。このままだったら絶対死ぬ…」
思わず独り言を呟いた時――すぐ背後で茂みが揺れる音がした。

 「…えっと」
お互いエンタ出演回数が殆ど無いせいだろう。 どうしても顔と名前が一致しない。こっちを恐怖に怯えた目で見るこの女性の名前は――。

 「赤いプルトニウムさん?ですよね?」 隣の相方、渡辺剛太(レム色)の声に、唐沢拓磨(レム色)は「あぁ、そうか!」と思わず声を漏らす。 名前を覚えていないことが明白な、かなり失礼なことを言ってしまった。
 「あ、すみません、覚えていなくって…」
 「そうだよ、失礼だよ」
 「仕様がないだろっ!!」
まるで中学生のような二人の会話を聞き、驚いたのかそれとも不信に思ったのか、 控えめながら赤いプルトニウムが声を発した。
 「あの、レム色さん、ですよね?」
 「え?あぁ、はい。そうです」
二人で頷き、座っている赤いプルトニウムの目線に合うよう二人とも腰をおろした。 土が尻につくのは気にしない。叩けばいいし。
 「えっと、レム色の唐沢です」
 「渡辺です」
それから唐沢は、自分が武器を何も持っていないことを両手をあげて証明した。 渡辺がそれに続く。
 「それで…何か?」
それは当然の質問だろう。赤いプルトニウムはやはり表情に不安の色を浮かべている。 唐沢は渡辺をちらりと見て――渡辺が頷いたのを確認し口を開いた。
 「単刀直入に言います。俺達と、仲間になりませんか?」

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