地を踏み、蹴る足音。荒い息遣い。そして叫び。 耳に入ってくるそれらは確実に大きくなってきている。 この先で、誰かと誰かが闘っているのだろうということは容易に予想できた。
 「なぁ、この先絶対誰かおるやん。どうする?」
あまり整備されていない土で出来た道――その脇に広がる河川敷の 草原を歩く井上聡(次長課長)は隣を歩く河本準一に向け、できるだけ小さい声で呟く。 聞えてしまうはずは無いと思うが、用心に越したことは無い。
 「そんなん、麻酔銃で撃てばええやん。むしろこれチャンスや」
 「あぁ、やっぱそう思うか」
草むらに紛れているため見つかる心配は少ない。出来るだけ近づいて、確実に狙いを定めよう。
 「なぁ、あれ誰やと思う?」
河本がナイフか何かで戦いあう影を指差す。 あの存在を確認したときから、井上も考えていた。 一方はこちらに背を向け、その人物に隠れもう一方の顔もうかがえない。
 「うーん…まぁ誰でもええんちゃう?殺せばわかるわ」
もうその影との距離も近い。 そろそろ動きを起こしても良いだろう。どうやら銃は持っていないようだし。
 「撃つわ」
しっかりと両手で構え、井上は引き金を引いた。 ダァンッ、と普通の銃と変わらないような破裂音。 しかしその銃声と全く同時に、誰かの叫ぶ声が聞えた。

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