自分が駆け寄るのとほぼ同時に二つの人影は折り重なるように倒れた。 今の銃声。撃たれたのはどっちだ――? もしもあいつだったら、それは俺のせいだ。 物音がして、様子を見に行ってくるから待ってるよう俺に指示し、 隠れていた倉庫から出て100メートルばかり離れた河川敷と密接する道へ向かっていった相方――
 「竹森!!」
思わず大声で相方の名前を叫んでいた。 帰りが遅く、心配になって見に来てみたら――。 安部浩貴(アップダウン)は倒れた二つの影に走り寄った。
 「だ、大丈夫」
相方――竹森巧は自分の上に倒れる男を押しのけ、なんとか這い出てきた。 良かった――。無事だった。
 「え?けどこれって一体――」
竹森のことばかりに頭が行って、その相手となっていた男のことを忘れていた。 土や砂で体が汚れることを気にすることもなく地面に横たわっているのは、 赤いスーツが目をひく――マギー審司だ。
 「俺、何もして無いけど…」
呆然とする竹森だったが、安部は気がついた。 マギーに目立った外傷は無く、血も流れていない。 しかも少し開き気味なその口からは、スースーと安らかな音が漏れている。
 「っていうか…寝てない?」
ありえないことだ。戦闘中に突然眠ってしまうなんて。 レギュラーの西川君じゃあるまいし。
 「いや、ありえないっしょ…」 目を丸くしマギーを見る竹森。彼の目にはクエスチョンマークが浮かんでいるようだ。
 「麻酔銃使ったならありえるやろ?」
その声に、二人は同時に顔を上げた。

「どーも、次課長井上です」
遠目で誰なのかわからなかったが、自分が今撃った男――マギー審司らしい―― と争っていたのは、アップダウンのどちらかのようだ。
 「え?麻酔銃って…助けてくれたってこと?」
困惑したような表情の竹森は、両手で地面を押して立ち上がる。 同じく混乱の色を浮かべる安部もそれに続いた。
 「まぁ、そういうことになりますね」
自分の背後にいた河本は、一歩前に踏み出す。見るとポケットが不自然に膨らんでいる。 手榴弾が入ってること、バレバレやん――。 つっこみたくなったが、どうせ今は使えない。後でも良いだろう。 それよりも今目の前で無防備に身を晒す二人を始末しなければ。 井上は手に持つ麻酔銃を構えかけ、動きを止めた。 遠くに続くこの道の先――アップダウンの後方に、複数の人影が見えたからだ。 チッと舌打ちし、井上は不自然に上がった両の手を下ろした。
 「すいません!そこの方々!」
駆け足でこちらに向かってきた人物。 幼児向け番組出演者のような格好をした男二人に、 あともう一人は――
 「あ!次課長さん!」
赤いプルトニウム。他番組での共演もある女芸人だ。 そして男二人はレム色。まだまだかなりの若手である。
 「え?なんなん?」
少々苛立った言い方になっていたかもしれない。何しろ思いっきり邪魔されたのだから。 河本のほうへ視線を走らせると、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
 「え、あの次長課長さんにアップダウンさんですよね?」
レム色のうちの金髪のほうが尋ねる。井上も、アップダウンの二人も無言で頷いた。
 「突然なんですが、仲間になってくれませんか?」

【残り46組】

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