教室の中が、段々広くなっていく。 さっき、木部とすっちゃんが殺された。 人を犠牲にして従わせようとした、あのオッサン。 許されへん・・俺は 陣内智則はそう考えていたが、口には出せない。 心の中には怒りがあっても、表へ出せば殺される。 結局は、プロデューサーの手の中に居る。 こうして怒りを覚えた陣内も、恐怖を覚えた他の芸人も。 「死」という現実を突きつけられれば、抵抗はできない。 それは、陣内もよくわかっている。 「…さて、お前らはどうしようか」 何言うとんねん。陣内はそう思った。 けれど周りを見て、すぐに答えは出た。 「面倒だなァ。ピン芸人は。このゲームのルールに属さない」 教室には、ピン芸人のみが残されていた。 面倒だ。プロデューサーは、そう言った。 番組を栄えさせようと散々利用したくせに。 面倒だ。プロデューサーは、そう言った。 そのことが余計に、陣内を苛立たせた。 「もう、1人で行ってくれないか?」 プロデューサーは言う。 「1人って・・俺ら、損じゃないんですか?」 向こうの機嫌を伺いながら、探り探り陣内は言った。 「損と取るか得と取るかは――お前ら次第だな」 プロデューサーが、煙草に火をつける。 教室には不似合いな煙たい空気が、残された芸人たちを包む。 「いいじゃないか。1人でも。連帯責任を取らなくて済む。違うか?陣内。」 「違…いません。その通りです」 違う。陣内は言いかけたが、言わなかった。 言って、目の前に居る“ビッキーズ”のようには、流石になりたくはなかった。 「まァ、頑張るんだな」 木部を殺した兵士が、陣内にナップザックをよこした。 陣内は両腕でそれを抱えると、ゆっくりと、外へ出る。 「・・・・覚えといてくださいね」 「何をだ?」 「・・何もないです」 陣内はそれだけ言うと、走り出す。 絶対生き残ってみせる 生き残って、アイツ殺す この首の拘束がなくなったあと、殺す 今支給されたこの小銃で。 すっちゃんの、木部の仇取ったんねん――――

本編  進む

功  ◆V9Blnd6aVs
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