突如聞えた叫び声に、思わず反射的に立ち上がった。 見ると、自分たちのいるところより奥の――穏やかな傾斜になっている木々の間の道を誰かが下ってきている。 しかもそれは、どこかのコンビがまた別のコンビに追われているように見える。 隣では、相方――板倉俊之(インパルス)も立ち上がり、その一連の光景を凝視していた。
 「おい、どうする…?」
どうする、と言われても、あれこれ迷っている時間は無い。 坂道を駆け下りるその速さからして、あと10秒くらいでこの前を通り過ぎるだろう。 堤下敦(インパルス)は返答と同時に走り出した。
 「もう助けるしかないでしょ」
すぐに例の道は近づいてきた。丁度走ってる人と鉢合わせになる形だ。 このまま、逃げている二人と追う二人のの間に入って――
 「止まれ!堤下!」
突然の板倉の制止に、堤下は道に入る手前で急ブレーキをかけた。 すると板倉に、道の脇に生えてる木の陰へ引っ張られる。 すぐ目の前を、逃げているコンビが通り過ぎた。
 「あっ!」
思わず声を漏らしたのは、その遠ざかる姿がよく見慣れた 親しい芸人――アホマイルドだったから。 驚く堤下を尻目に、追いかける側のコンビが前の道を通るか通らないかのところで 板倉がバッ、と木の陰から飛び出した。 サッ、とその二人の進行方向へ板倉が足を出すと、 見事に板倉の足に引っかかり派手に横転する二人組が堤下の目に映った。

 「よし!」
引っ掛けた足に痛みを感じながらも、 板倉は素早く倒れた二人組の体をまたいだ。 二人のうち一人がグレネードランチャーのようなものを持っていて、転んだ際落としたそれを拾うためだ。 土や枯れ葉の上に落ちたそれを手に取ると、ずっしりとした重量感が感じられた。
 「だ、誰だ?」
後ろからくぐもった声がし、まずいと思い振り返ると、案の定今倒した二人組が起き上がっていた。 そしてその姿に板倉は目を丸くした。 ガスマスクのようなものをしているのだ。しかしそれで顔を隠していても、すぐに誰だか判別がついた。 飯田春雄ことベルナルド・アッカー。こっちは何度も見たし、 はねるでの水鉄砲でのお仕置きは、堤下も自分も体験済みだ。 そして相方――は名前なんて言ったか忘れたが、ともかくこの二人は塩コショーに間違いない。 その二人がガスマスクをしていることから、このグレネードランチャーの正体がすぐにわかった。
――毒ガス。
このプログラムはこんなものまで支給されているのか…。 板倉は恐怖を覚えた。
 「板倉さん!!」
堤下が駆け寄ってきた。その顔には焦りの色が浮かんでいる。
 「行くぞ!!」
堤下が来るなり塩コショーの二人を置き、坂道を下りだした。ワンテンポ遅れて堤下がついてくる。
 「これ、この武器。あいつらのだ。もう奪っちゃったから平気じゃん?」
 「う、うん。さすが板倉さん」
 「あれさっき、逃げてたのアホマイルドだったよな。おまえと仲の良い。だから早く合流しようよ」
足の速さには多少自信のある板倉だったが、グレネードランチャーの重みで堤下と並んで走るくらいの速さになっている。 後ろをチラッと振り返ると塩コショーの二人が起き上がりこちらに向かって何か言っているのが見えた。 追ってこないといいけど――。 朝の光が差し込む森の中を、二人は駆け抜けていた。

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