二人は大木を探していた。 そう、ちょうどこんな木を。 ちょうどいい高さに、ちょうどいい枝が生えている、 こんな木を。 葉や小枝を掻き分ければ、下の様子は良く見えるし、 この高さなら勢いをつけて飛び降りても、怪我することは無いだろう。 そして何よりも、つるはしと業務用スコップを持った男が二人、 そこで潜んでいても、折れるどころか軋みさえしない枝。 覆い繁る葉や小枝は、二人の姿を隠してくれた。 ここなら大丈夫だ。 後は、この木の側を獲物が通るのを待つだけだ。 かなり地味な作戦だし、何時迄もこうしているつもりは無かった。 ただ、放送を頼りに、生存者がある程度の数になる迄、そうするつもりだった。 銃やマシンガンを持った相手に、つるはしやスコップは不利だ。 ただ、生存者の数が減る頃には、そいつらも弾を使い果たしているかもしれない。 そんな甘い思惑もあった。 最初に渡された武器は、アフロヘアーのヅラとパーティ用のクラッカーだった。
「確かに芸風にはあっているけど...これでどうしろと?」 「東急ハンズのパーティーグッズコーナーみたいな武器で...」
どうしたらいいのかわからず、二人はふらふらと歩いた。 たまたま見かけた民家のような建物。 二人は、用心しながら入った。 誰もいなかった。 ただ、つるはしとスコップが目に入った。 確かに持ち歩くには、体力的に、かなりな負担になるだろう。でも...
「今、俺達が持っている武器よりは、有利だよな。」 「そういえば、放送でガッポリ建設さん、死んだって言ってたし。」
ガッポリ建設が置いて行った武器かどうか、知る由も無いし、知ったところでどうしようもない。 確かに、ガッポリ建設らしい武器ではあるけど、でも ただ、目の前につるはしとスコップがあるだけだ。
「!そうだ!」
金髪の方が、作戦を打ち明けた。
黒髪の方は、それに乗った。
金髪はつるはしを持った。
黒髪はスコップを持った。
そして二人は思惑通りの木を見つけた。
「用は、一人を殺ればいい。ピンだろうと、コンビだろうと、トリオだろうと、ザ・プラン9だろうと、かんからだろうと。」
「かんからはこのゲームに参加していないよ。」
「しっ!」
つるはしの男は、足音を聞きつけて、相方を黙らせた。 そっと、音を立てないように、葉や小枝を掻き分けて下を見る。 三人の男が、都合のいい事に、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。 つるはしの男は、その内一人を指差した。 テレビで何度か見たことのあるトリオ、その内一人が死ねば、それでそいつらは終わりだ。 つるはしの男が指をさしたのは、自分と同じく金髪だった。 ただ、俺と違って地毛だろうがな、そう思った。 金髪の男を選んだ理由は2つ。 一番やる気がなさそうだったのと、 たぶん傷を負っているだろうからだった。 ターゲットの金髪男のジーンズ、左の太股部分は少し裂けていた。 そしてその周囲にこびり付いた血。 スコップの男は、うなずいた。 つるはしの男は心の中でカウントダウンを始めた。
「5...4...3...2...」
そこ迄数えた時、ターゲットの金髪男は、 こんな状況だもん、空でも見上げなきゃやってられないや、 と言わんばかりに顔を上げた。 その時、目が合った様な気がした。
「パン。」
カウントダウンの残りの1迄、数える隙も無かった。 一発の銃声と共に、つるはしの男は眉間から血を流し、木から落下した。 つるはしと、血と、頭皮...否、金髪のヅラ。 全てが一瞬の出来事だった。 だから、スコップの男には、状況が飲み込めなかった。 だから、スコップを振り上げながら、その金髪男に向かって、枝から飛び降りた。 あたかも、もう、体にそうプログラミングしてあったかの様に。 首輪のセンサーは、もう反応しているのに。 つるはしで相手を殺すか致命傷を負わせ、スコップでとどめをさす。 その予定だった。 だけど金髪男はすばやく身をかわし、スコップは空しく地を叩いただけだった。
「あ...ああ...」
そう言うしか、無かった。
「出来るだけそいつから離れろ!」

スコップの男が最後に聞いたのはその言葉と、首輪の激しい爆音だった。 散り散りに避けた3人は、爆音の後、ほぼ同時に立ち上がった。
「あー、よかったぁ。」
ターゲットにされた金髪の男、インスタントジョンソンのジャイの、そのよかったは、 助かってよかった、 では無いことは、もうスギとゆうぞうにはよくわかっていた。
「やっぱり、人の返り血浴びた服着続けるの、嫌だしね。 俺のは自分の血だけど、それでも嫌だし。」
ジャイが人を殺すのは、これが初めてじゃない。 ただ、加速度をつけるかのように、射撃の腕は、上がっていた。 最初に、ヒロシを射殺してから...

――ヅラットピット死亡

【残り44組】

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蛙 ◆GdURz0pujY
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