食器のがカチャカチャと楽しそうに触れ合う音や、 思わず食欲をそそるカレーのにおいが小さな室内に溢れる。 板倉のために作り出したカレーは、一時間ほどかけてなんとか出来上がった。 他人の家ということでいろいろと準備に時間がかかったが こうしてなんとかできたのは、手伝ってくれたアホマイルドのおかげだろう。
 「ありがとう」
電子レンジでチンした冷凍のご飯にカレーをかけながら堤下は二人に礼を言った。 二人はソファーに腰掛け少し眠たそうな表情を見せている。
 「今八時だから丁度朝ごはんじゃん」
先程パンを食べた三人だったが、カレーも食べるきまんまんだった。 小学生とかの言いそうなことだが、やっぱり自分で作ったものは格段に美味しく感じられる。
 「あんまり食いすぎるなよ。俺板倉さんにあげてくるわ」
そそくさと皿にご飯をよそいはじめた二人を尻目に、板倉のいる寝室のドアをあけた。 小さなベットが二つ並んでいるうち、奥側のベットの布団が少し膨らんでいる。 そこまで寒くないにも関わらず、板倉は体に布団を巻きつけ寝息を立てていた。 あまり音を立てぬようそっと近づいたつもりだったが浅い眠りだったらしく、堤下が近づくなりすぐ、薄っすらと目を開けた。 ゆっくりと体を起こした板倉は、堤下が手に持つ御盆に目をやった。
 「あ、これ朝ごはん。俺らで作ったんだけど、ジャガイモ入りカレー。食ってよ」
 「うわ、まじか。食ってもいいけどちょっとエチケット袋が必要だな」
 「いや、吐くなよ!」
ボケとツッコミが成り立ったことが嬉しいのか、ニヤニヤとしながら板倉は皿とスプーンを手にとった。 こうして手料理を振舞うことは久しぶりだ。板倉がスプーンを口に運ぶのを見ながらなんだか妙にドキドキしてしまった。
 「あぁ…若干ねぇ…おまえの汗の入ったような感じが…」
 「入ってねぇよ!!ちゃんと拭いたよ!!」
そう言いつつも驚くほどの早さで一皿完食してしまった。やっぱり、好物であるジャガイモをいれたのが正解だったみたいだ。 見ると、先程は青白かった顔に薄っすらと赤みがかかっている。
 「堤下…サンキュウな…」
 「…あぁ」
クスクスと笑った二人の笑い声が、朝の穏やかな寝室にいっぱいになった。

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