スタートからだいぶ時間が経っているのに、二人とも今だ襲われていないのは奇跡に近かった。 だからこそ、今の戦いに現実味が湧かないのだ。 ―目の前に、見覚えのある死体が転がっていても。 「うわぁ」 やついが顔を歪めていた。 死体はまだ新しく、血がどす黒く固まり始めていた。 そしてこちらに向けている顔は、紛れもなく長井秀和のものであった。 「死んじゃったのかぁ」 やついの声からは感情が消えていた。 拉致されてきた時も、教室で待たされている時も、やついは引きつってはいたものの笑顔で過ごしていた。 だが、目の前でビッキーズが殺された時からやついは感情を出さなくなった。 相方の今立としては、そんな姿を見るのは辛かった。 今立は迷っていた。 どうすれば、元の世界に戻るのだろうかと。どうすれば、またこいつが、皆が笑えるようになるのかと。 だがこうして目の前には死体が転がっているし、元の世界なんて望めそうにもない。 今立は迷っていた。 生き残った所で、それで幸せな世界が戻るだろうか。このまま生き続けて、彼の笑顔が戻る事があるのだろうか。 …ならば、彼を殺して俺も死のうか。 今立は迷っていた。

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