銃を撃った衝撃で未だビリビリと痺れるその両手。 映画やドラマで見た時のように、勢いよく、噴水のごとく血が飛び出すのを期待していたが、思ったよりそれは静かに、音もなくじわりじわりゆっくりと流れ出てきていた。 撃ち殺した奴の髪は相変わらずふわふわとした茶髪だったし、肌の色は生きていた時と変わりなかった。 血は赤黒く、思ったより色も綺麗じゃなかった。 それでも………。 「最っ、高―――っ!」 阿部は再びくつくつと笑い出した。 ―――ああ、俺って強いなぁ。 ふいに、相方の顔を思い出した。“陣内を殺したら戻ってくる”と一応は約束をしたものの、やる気でない吉田を連れて歩くのは単に邪魔にしかならない。 もし何らかの武器が彼の手に渡ろうものなら、その場で自殺してしまう可能性もある。 吉田だけ死ぬならかまわないが、なんにせよ“首輪連動”といううざったいルールのせいで、自分も道連れにされてしまう。 もういっそ彼の事は放っておいて一人でいようか。 うん、そうしよう。 戦わない奴は邪魔だし。行こ行こ。 だが、暫くの間、阿部は立ち止まったまま動かなかった。難しい顔をして、何かを考えているようだった。 そして、顔を上げて、再び元来た道を歩き出す。 吉田を閉じこめた、あの釜戸がある場所へ。 「ん…まあ、様子を見るだけでも、してやらないと。」 カラカラ…と長いライフルを引きずり地面にまっすぐな線を引きながら鼻歌交じりに歩いていった。 阿部は自分の目を疑った。 「え……」 「何で………」 「ど う し…――――、」 銃が手からすり抜ける。 がちゃん、と無機質な音だけが響いた。 居ない。 吉田が…。 しっかりと締めていたはずの鍵は乱暴に外されたのか、バラバラに散って歪んでいる。 錆びた鉄のドアが風に揺られて軋んだ音を鳴らしている。 その釜戸の周りには、明らかに複数の人間がいた事を示す、足跡。 ―――“蛇”に、食べられちゃった…? 「!」 ばっ、と無意識に自分の首輪に手を当てる。心臓が早鐘のように鳴る。 しかし首輪が鳴る様子はない。とりあえず胸をなで下ろした。 そして、途端に冷めた表情へと変化し、呟く。 「…どこだ…」 「どこへ行った……」 「誰が、逃がしやがった!!」

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