『皆ー!!僕らの話を聞いてー!!』 この聞き覚えのある声、関西弁のなまりはレギュラーとしか考えられない。 2人は一体どこで、なにをやっているんだ――?  「放送室だ」 冷静な、けれど焦りを隠せない声で板倉が言った。  「地図にあったよ。ここ小さな島だから、 きっと島中に伝達ができるようになってるんだ。その放送室から、2人は呼びかけしてんだよ」   『僕ら戦う必要なんかないはずや!!皆ー!僕らのとこまで来てー! 仲間になって、皆で一緒に生き残ろうー!!』 これだけ大きな声だ。当然島中に聞えているはず。 堤下は地図を広げ、放送室の位置を確認した。  「行こう」 のんびりしてはいられない。あの2人が勇気を出してくれたお陰で出来た、仲間をつくる最大のチャンスだ。 しかしあの2人にも危険が伴う。早く行って仲間になって、安全な場所へ行かないと――。 地を蹴った堤下の腕に、逆向きの力がかかる。急に制止され、体のバランスを崩しかけた。 見ると板倉が堤下の腕を引っ張る手を離したところだった。  「なにすんだよ?!」  「おまえ馬鹿か?!どこ行く気だよ!!」  「どこって決まってんだろ!!あの2人のところへ行かないと――」 突然制止されたことと焦りでつい口調が激しくなる。 こんなところで話してる場合じゃないんだ!レギュラーの2人の命がかかっている。  「あいつらが危険だからか?仲間がほしいから?いいか、放送室へ行くまでかなり距離がある。 その間にだれに会うかわからないし、もしかしたらあの放送につられて出てきたやつらを 片っ端から殺そうと待ち構えているやつがいるかもしれない。危険すぎるんだよ!!」 焦りが見える、怒鳴るような言い方だったが 板倉の冷静さは健全のようだ。周りの状況をしっかりと判断し、危険を予知している。 こんな状況下で大したものだとは思った。が、むしろそれが余計に腹を立たせた。  「じゃあなに、危険をおかしてまであいつらを助ける必要は無いっていうのかよ!?」  「んなこと言ってねぇだろ!!銃貸せ!!」 板倉は、堤下の手から銃をひったくるとそれを自分たちの頭上へ向けた。 両手でしっかり構え、ピンと腕を伸ばしている。  「なにすんだよ!?板倉さん!!」 堤下の問いには答えず、板倉は黙って引き金をひいた。 バァン、という破裂音。アホマイルドの2人は事前に耳を塞いでいたのだが、 それを忘れた堤下は、銃声をもろに耳にひびかせてしまった。一気に広がる火薬のにおい。 見ると板倉は衝撃でふっとばされ地面に背をつけていた。  「これで引っ込んでくれれば…」 そうか――!!  やっと堤下は板倉のこの行動の意味を理解した。 銃声ほどの大きさならきっとレギュラーの2人にも聞える。 この音を聞いて驚き、呼びかけをやめてどこかへ隠れてくれれば――。 しばしの沈黙。 『銃なんて撃たんといて!!皆、僕らのとこまで来てー!!』 駄目だ。意外に根性があるのかレギュラーの2人は引っ込まない。 早く、早く隠れるんだ――!!  「板倉さん!もう一発!!」  「無理だよ。今ので俺達の場所が誰かに知られたかもしれない。俺達だって危ない」  「くそっ!じゃあどうしたら――」


『パラララララララッ』


古いタイプライターを叩くような音。 島のどこかで時々響く音。 この音の正体――。 ブッ と電子音がして、放送は切れた。 ――マシンガン

このプログラムで支給されたうちの武器で最高の部類に入る。 一度で何発も弾丸を吐き出すことができる、弾丸のシャワー。 その音を最後に、放送が再びかかることはなかった。

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